大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

徳島地方裁判所 昭和45年(わ)183号 判決

本店所在地

徳島市東新町二丁目二五番地

有限会社

ニコニコヤ玩具店

右代表者代表取締役

新居真

本籍ならびに住居

徳島市東新町二丁目二五番地

会社役員

新居キミ子

大正元年一〇月一六日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官杉本善三郎出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社ニコニコヤ玩具店を罰金二五〇万円に、被告人新居キミ子を罰金一二〇万円にそれぞれ処する。

被告人新居キミ子において、右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社ニコニコヤ玩具店(以下被告会社という)は、徳島市東新町二丁目二五番地に本店を置き、同市南新町に商品センター、同市元町に名店街支店なる各店を有し一般玩具の卸売および小売を主たる事業目的とするもの、被告人新居キミ子は昭和二七年六月ごろから昭和四五年一〇月五日まで被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、同被告人は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、

第一、昭和四一年六月一日から昭和四二年五月三一日までの事業年度において、被告会社の所得金額が一〇、七一九、八二二円で、これに対する法人税額が三、五四一、六〇〇円であるにもかかわらず、公表経理のうえで売上げおよび仕入れを除外したり、架空人名義で預けている銀行預金の利息を除外するなどの行為により所得を秘匿したうえ、昭和四二年七月三一日徳島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一、七八七、三三二円でこれに対する法人税額が五〇〇、三〇〇円である旨僅少に虚偽の記載した同事業年度の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、前記納付すべき税額との差額である法人税三、〇四一、三〇〇円を免れ、

第二、昭和四二年六月一日から昭和四三年五月三一日までの事業年度において、被告会社の所得金額が一一、一九四、〇三七円で、これに対する法人税額三、七〇七、九〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により所得を秘匿したうえ、昭和四三年七月三一日徳島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五八三、二七五円で、これに対する法人税額が一六三、二〇〇円である旨最少に虚偽記載した同事業年度の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により前記納付すべき税額との差額である法人税三、五四四、七〇〇円を免れ、

第三、昭和四三年六月一日から昭和四四年五月三一日までの事業年度において、被告会社の所得金額が一七、三四〇、四四〇円で、これに対する法人税額が五、八五九、〇〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により所得を秘匿したうえ、昭和四四年七月三一日徳島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六、三八二、二二八円で、これに対する法人税額が二、〇二三、七〇〇円である旨過少に虚偽記載した同事業年度の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、前記納付すべき税額との差額である法人税三、八三五、三〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人新居キミ子の当公判廷における供述

一、被告人新居キミ子の検察官に対する供述調書

一、被告人新居キミ子の高松国税局収税官吏に対する質問てん末書七通

一、証人小橋正水の当公判廷における供述

一、小橋正水(二通)、橋本寛利、新居真、新居美智子、西口澄子、北村一夫、原田実の検察官に対する各供述調書

一、北村一夫、原田実、杉口源二郎、野々瀬弘行、山本金作、中川文吉の高松国税局収税官吏に対する各質問てん末書

一、新居キミ子、橋本寛利共同作成の上申書(昭和四五年一月二六日付三通)

一、杉口源二郎、山崎宇治長共同作成の上申書

一、中田信雄作成の上申書

一、北川他家治、三田良幸共同作成の上申書

一、四国銀行徳島支店長島中徳蔵作成の証明書五通

一、四国銀行幸町支店長原田実作成の証明書五通

一、四国銀行幸町支店長原田実作成の証明書

一、押収してある(有)ニコニコヤ玩具店法人税決議書綴一綴(昭和四五年押第七四号の一)、元帳三冊(同号の二)、銀行勘定元帳四冊(同号の三)、仕入帳三冊(同号の四)、試算表三冊(同号の五)、雑書綴一冊(同号の七)、近藤利一名義の四国銀行普通預金通帳一冊(同号の八)、山田茂子名義の四国銀行普通預金通帳一冊(同号の九)、レジペーパー三枚(同号の一〇)、売上メモ一枚(同号の一一)、予定計画表一冊(同号の一二)、定期預金明細表三綴(同号の一三)

(法令の適用)

被告人新居キミ子の判示第一ないし第三の各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、同被告人の本件各犯行によって被告会社が免れた法人税額は一千四十二万一千三百円にのぼり、方法も継続的であり動機として格別同情すべき事情はないこと、しかしながらその後同被告人は被告会社の代表取締役の地位を退くなど改悛の情顕著であり、被告会社でも従来被告人新居キミ子一人にまかせきりにしていた経営面、経理面を改善すると共に再犯に出ないことを誓っていること、また被告人新居キミ子は夫と死別後、玩具業一筋に打ち込み被告会社を代表的玩具店に仕上げるかたわち、子女の養育も立派になしとげた婦人として社会的信望を得てきたものであるが、今回の事件が公にされるに及んで十分社会的制裁を受けていること、さらに被告会社が国税局の調査の結果、ほ脱額とされた法人税およびこれを前提とした加算税、延滞税はもとよりこれに伴う地方税もすでに完納していること、その他諸般の情状を考慮して所定刑中罰金刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項を適用して各罪所定の罰金の合算額の範囲内において、被告人新居キミ子を罰金一二〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金一万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。また、被告会社に対しては法人税法一六四条に従い同法一五九条一項所定の罰金刑で処断することとなるが、判示第一ないし第三の各所為は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項を適用してその合算額の範囲内で罰金二五〇万円を科する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 大山貞雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例